ヤマユリ、ササユリに代表されるユリは花も美しく、山野草のなかでも独特な地位を占めています。またユリと一口に言っても様々な種類があり、形態も性質も種類によって大きく異なります。
以前はユリ科は巨大な分類でしたが、AGP体系になって大きく解体され、本来のいわゆるユリとバイモやチューリップ、カタクリなどを含む分類に再編成されました。
それでもまだユリ科は大所帯で、たくさんの種があります。またユリはきれいで人気がある割には維持が難しく、栽培が苦手という声をよく聞きます。
ここでは、当園で扱ったことのあるユリを紹介し、ごく簡単に栽培のコツなどを紹介したいと思います。栽培や購入時の参考になさってください。
※一応、ゆるく育てやすい順に紹介しているつもりですが、実際にはそれほど極端な違いはありません。易しい、普通、難しいくらいで、その中での管理に大きな違いはありません。またこの難しさは全て個人的な主観によるものですので、そのへんはご理解ください。
※種と品種が混在していますがそこもご容赦ください。
比較的栽培が簡単なユリ
ここではわりと易しいユリたちを紹介します。
オニユリ
オニユリは極めて丈夫なユリで、ユリ類の中ではもっとも栽培が容易なもののひとつです。なにより、病気に強く病変が少ない。また葉の付け根にできるムカゴで容易に増える。
こぼれたムカゴが成長して知らないうちに咲いてくることがよくあります。
品種は八重咲オニユリ、黄花の黄金オニユリがよく知られています。最近は無点花の素心オニユリや覆輪のオニユリも見られるようになりました。
唯一気をつける点は、よく日に当てて徒長させずに育てること。また成長すると大型になるのでちゃんとしたサイズの鉢に植えること。
初心者にもおすすめのユリです。
テッポウユリ
テッポウユリは沖縄、鹿児島など南のほうに自生する野生種です。以前、テッポウユリをもとに作出された白覆輪の長太郎ユリが大量に出回りました。現在は病気などの理由でほぼ出回っていないらしいですが、本来は丈夫な種類のユリです。
長太郎ユリの他にもテッポウユリをもとにいくつかの園芸種が作られていて、どれも比較的作りやすいユリです。
当園で扱っている白覆輪テッポウユリは、長太郎ユリではなく屋久島産の斑入種です。これもやや草丈が低めで、作りやすいタイプです。
コオニユリ
コオニユリもオニユリと並んで作りやすいユリ。オニユリよりも茎が細く、花も背丈も小型。日なたで作れる丈夫なユリです。
ムカゴはほとんどつかないのでオニユリに比べると増えはよくありません。花が咲かない球根だと、茎の先端にムカゴがつくことがあります。
食用にする百合根は多くがコオニユリだということです。
スカシユリ
スカシユリは海外沿いの砂場や崖に生えるユリです。草丈は30cm程度で、上向きに咲く大きなオレンジ色の花が特徴で、名前の通り花弁と花弁の間に隙間があります。
これをもとに園芸品種がいろいろ作られていて、今ではスカシユリというときれいな園芸品種がイメージされることのほうが多いかもしれません。が、野生のスカシユリもなかなかいいものです。丈夫で、日にも強い。変種にイワユリやエゾスカシユリがあります。
カノコユリ
カノコユリは九州~四国に自生する大型のユリです。真夏に咲いてきますが、真夏の日なたでも育つくらいに丈夫なユリです。ピンクに濃赤の模様からカノコユリと呼ばれています。
高さは1mを超え、やや斜上する茎の先に数輪の大きな花を付けます。これも園芸品種の母種として利用されていて、赤カノコユリ、白カノコユリ、黄カノコユリなどもあります。
四国の崖に生えているものをタキユリと呼びますが、カノコユリと別種なのかどうかはわかりません。
ウバユリ
大型で存在感のあるウバユリも、比較的作りやすいユリです。また平地の野山にもたくさん自生している姿を見ることができます。
栽培のコツは、日陰に置き直射日光を避けること。丈夫ですが、直射日光下ではさすがに傷んで枯れてしまうこともあります。もともと花が咲く頃に葉が傷んでくることがおおいユリですが、直射日光を避けることである程度葉をきれいに保つことができます。
球根はこぶし大の大きさになるので、鉢植えのばあいは適切な大きさの鉢を用意することも大切です。
開花後はいくつかの分球を残して本体は枯れてしまうことがほとんどですが、分球からでも生育は比較的早い。
東北、北海道のものはより大型で花も多いオオウバユリという変種です。
戸隠姫タニマユリ
戸隠ヒメタニマユリは戸隠山の山頂付近の岩場で発見されたユリ。タニマユリはコオニユリの変種ということで、全体的に小型で葉も細い。崖や岩場に生え、下垂して咲いていることもあります。
戸隠姫谷間ユリは日当たりの良い岩場でみつかったもので、タニマユリのなかでも小型のタイプだと思います。
直射日光かでも作れ、とても丈夫。そして球根の形状などがコオニユリとまったく異なります。ポットで作ると茎は斜上します。
イワユリ
イワユリはスカシユリの変種とされ、日本海側に生えるものをとくにイワユリと呼ぶようです。また小型のタイプが多いとされています。
当園で生産した佐渡イワユリはそのなかでもやや小型なほうではないかと思います。大体高さ15cm程度から花をつけ、花も少し小さめです。直射日光によく耐え、丈夫なユリです。
スカシユリに比べると少し暑がるかな、という気がします。
ノヒメユリ
ノヒメユリは九州など南部の平地に自生する小型の球根をもつユリです。
紛らわしいですがヒメユリとは違うユリです。「ヒメ」と付きますが背丈は1mを超えます。ただ草姿は細く、葉も細く花もちいさく繊細な雰囲気があります。また球根も小さめで、直径2cmあれば大きいほうです。
直射日光に強く、日なたで育てることができます。開花は遅めですが水ぎれに注意すれば葉焼けせずに咲かせられると思います。
とくに生育初期はよく日に当て徒長させないようにしましょう。
姫高砂ユリ
タカサゴユリは台湾原産のユリで、ずんぐりしたテッポウユリをシュッと縦に引き伸ばしたような姿をしています。花も葉も細長い。
高砂ユリは高速道路の法面などに勝手に生えている印象で、園芸品種の母体に使われるのを別にするとそのものを観賞用に育てることはあまりないと思います。
ただ、たまたま発見された小型の「姫高砂ユリ」は、花はラッパ型の長筒ですが草丈は大きくても30cm以内と随分小型で、魅力的な姿の佳草です。
高砂ユリと同じく基本的には丈夫ですが、夏の水切れに注意が必要です。
リーガルリリー
リーガルリリーは中国原産のユリで、これも高性でラッパがたの花を咲かせる、テッポウユリににたタイプのユリです。
かなり丈夫で、ほうっておいてもきちんと咲いてきてくれます。半日陰でも、かなりの日当たりでも育ちます。
球根が大きいと草丈も楽に1mを超えるほどになりますが、詰めて作ると30cmくらいで開花します。
これも徒長させないようにして、ヒョロヒョロにならないようにしましょう。
次は、今までのものよりやや栽培が難しいユリを紹介します。