栽培難易度が普通くらいのユリ
放ったらかしでは場所によっては枯れてしまうことのある、置き場所などを工夫すれば育てられるユリたちです。
リリウム・カナデンセ
リリウム・カナデンセは北米~カナダに産するユリです。茎の途中で輪生する葉から花茎を伸ばし、下向きの反り返らない花を咲かせます。日本のユリにはないタイプで、魅力的なユリです。
これも比較的日差しに強く、作りやすいものです。球根の形状も独特で、ランナーの先に小球をつけて増えていきます。
ヒメサユリ
ヒメサユリは有名なピンクの美花で、新潟県は産地として有名です。ヤマユリ、ササユリと並んで有名なユリではないでしょうか。
栽培は難しいという人もいますが、日差しにもかなり耐え、丈夫なユリです。炎天下の平地で栽培している人もいます。また開花期が早いので暑くなって葉が傷み始める前に花が咲くというのも鑑賞上は有利なユリかも知れません。
できれば5月以降は半日陰で、水は乾いたらたっぷりやることが大切。
阿州ユリ
阿州ユリはヤマユリとカノコユリの自然交雑種と言われているユリです。花期は7月でカノコユリよりも少し早く、花型はカノコユリよりもちょっと花弁が乱れ、ヤマユリっぽいところがあります。
カノコユリの特徴でもある赤い斑点はうすくピンク色になっていて、とても上品で美しい色をしています。カノコユリの天女という品種にとても良く似ています…
性質はカノコユリを受け継いでいるらしく丈夫。ヤマユリよりもずっと作りやすいのではないかと思います。
ヤマユリ
ヤマユリは説明するまでもない有名なユリ。日本の山野に自生し、高さは1m以上、花も大きく立派な美麗種です。
作りやすいほうだと思いますが、日なたでは葉焼けしてしまうので半日陰に置くようにします。また病気にもなりやすいのでオルトランなどを定期散布するのも大切。
水は乾いたらたっぷり。水はけのいい場所、斜面によく生えています。
ウケユリ
ウケユリは鹿児島県の奄美群島に稀産するユリ。なかでも請島に自生することからウケユリと呼ばれています。
ササユリの変種で、岩場や崖に生え純白の花を上向きに咲かせます。成長するとかなり大きくなりますが、実生では高さ20cmくらいから開花。蒸れ、暑さにも強くササユリより作りやすい気がします。
ヒメユリ
ヒメユリは東北から九州の平地に多く自生するユリです。球根は小さく、茎も細いですが背丈は60cmくらいになります。球根、草姿はノヒメユリに少し似ていますが、花は似ていません。上向きに咲いて鮮やかな朱赤の花を咲かせます。
九州の平地に産することで暑さに強く丈夫なように感じますが、失敗することがよくあります。夏過ぎまで元気なようでも、秋に掘り上げてみると球根の基部が傷んでいることがあります。
日なたで育てるユリですが、多湿に弱いかも知れません。また東北産のもののほうが丈夫な感じもします。夫婦ユリ、と呼ばれる花茎が2本ずつでるタイプがありますが、これは東北ヒメユリのことかもしれません。
メオトユリと呼ばれるタイプは花茎が2本のびて咲くのでそう呼ばれていますが、必ず2本セットで咲くわけではありません。
分球が良いのが特徴で、秋に2球に増えていることが多く結果的に2本ずつ咲くことが多いというものです。1本で咲くことも、3本で咲くこともあります。
なおメオトユリ≒みちのくヒメユリだと思います。東北産ではなく、東北で生産されたタイプでしょうか?
タモトユリ
タモトユリは鹿児島県の口之島に稀産するユリで、幻のユリと言われています。上向きに咲く純白のユリで、ヤマユリと同じくオリエンタル・ハイブリッドの交配によく利用されたということです。
もとは南の島のユリで、暑さにも強く比較的育てやすいように思います。
サクユリ
サクユリは伊豆八丈島、青島に稀産するユリです。姿はヤマユリによく似ていて、ヤマユリの赤い斑点が黄点に変わったような大きな花を咲かせます。
牧野富太郎の図鑑によると「日本産ユリ属の王者といえよう」とあり、たしかに花も大きく美しく姿も立派です。
ヤマユリとよく似ていますが、小さいうちはなんとなく暑さに弱くやや作りづらいような気がします。
マルタゴン・リリー
洋種のクルマユリという趣のユリです。ヨーロッパからアジアにかけて分布するユリで、葉の付き方、反り返る花弁の様子がクルマユリによく似ています。洋種クルマユリという呼び方で流通していることもあります。
日本のクルマユリとは違い、花の色はピンクが基本で、さらにいろいろな変化があります。交配も行われていて、黒っぽい色や紫っぽいいろなど様々な品種が作られています。
姿は日本のクルマユリよりやや大きく、剛直な感じです。そして丈夫。ウィルスにも比較的強く、クルマユリより雑にあつかっても大丈夫なことが多いです。
リリウム・ランコンゲンセ(香水ユリ)
香水ユリと呼ばれている中国産のユリです。なぜ香水ユリという和名が付けられているのか、不明です。
高地に産するということですが、その割には丈夫。半日陰におけば普通に育てられます。ただウィルスは入るので予防はしましょう。
花の形や丈夫さなどから、ヨーロッパのマルタゴン・リリーと似たような感じもします。
クロユリ
クロユリは厳密にはバイモの仲間で、ここに挙げた他のユリとは若干性質が異なります。ただ、山野草としては有名なものなので、あわせて紹介します。
クロユリは高山性の球根植物で、花期は5月ごろですが花後早く茎が倒れるので、遅咲きのスプリング・エフェメラルの一種と言えるかも知れません。
花後、乾かし気味にして日陰に置き、球根の腐敗を防ぐことで平地でも育てられます。りんぺんはボロボロとよく取れますが、ムカゴほどよく発芽するものではありません。
神嶺ユリ
神嶺ユリは四国の一部に稀産するササユリの変種です。ササユリに比べると細身のすらっとしたすがたで、花も筒状でやや細長く、また色が濃い感じがします。
ササユリに比べると丈夫で、作りやすい印象を受けます。また比較的小さな球根のうちから花をつけることが多いです。
日向ササユリ
日向ササユリもササユリの変種で、九州に産する大型のササユリです。こちらは早咲で、花は大きく色の濃いタイプが多いようです。
これもササユリに比べると作りやすい感じですが、花期が早いせいかも知れません。
ササユリ
ヤマユリについで有名な国産のユリです。葉が細く縁が白く縁取られる覆輪ササユリ、香りの強いニオイユリなどのタイプがあり、また花色も淡いピンクからほぼ白に近い薄い色までばらつきがあります。
比較的難しいのは、背が高くなることと、暑くなりだすころに咲くせいでしょうか。半日陰で直射日光を避けて育てます。また球根もデリケートで、乾かしすぎたり傷つけたりすると出芽しなかったりするようです。
北陸産のものが比較的作りやすい気がします。
タケシマユリ
タケシマユリは韓国の鬱陵島の特産品です。
クルマユリが大型になったような姿で、花も少し大きめ。クルマユリほど反り返らず、色も黄色みが強いです。
比較的丈夫で、クルマユリほど繊細な管理は必要としない感じ。ただ、病気は入るので予防は欠かせません。