椿は日本を代表する花木です。日本にはユキツバキ、ヤブツバキ、サザンカなど数種類の仲間があり、また中国やベトナムなどに近縁種がいくつか存在します。多彩な美しい花をつけ、海外でも高い人気のある樹木です。
個体による変化の幅の大きな植物で、人為的に交配したもの、自然実生によるものなど数百を超える種類の椿があります。またアメリカやヨーロッパでも交配されており、外国で発表された品種もたくさんあります。ただし、すべてが商用に生産されているわけではありません。
庭木にもでき、また鉢で栽培することもでき、お茶花にも利用できます。多彩な品種があり、栽培が比較的容易なことからもとてもおすすめな植物です。
基本的な育て方
丈夫な木です。カンカン照りの場所よりは明るい半日陰を好みます。また水も好きなので、水切れには注意しましょう。
一番気をつけることは冬の寒さです。椿は北海道には自生していません。関東、本州では庭植え可能ですが、極端な低温には弱いので小さいうちは寒風にあたって傷めないようにします。できれば小さいうちは玄関にいれる、冬囲いをするなどして直接冷たい風に当たらない場所に移したほうが無難です。
それ以外は、普通に水をやっていれば特に問題なく成長するはずです。
季節ごとの管理
春先は水を切らさないようにしましょう。とくに蕾がついている木は花を開かせるために水分を必要とします。春先に水を切らすと蕾が落ちてしまうことがあります。そうならないようにきちんと水をやります。
夏の間はひでりに注意します。直射日光が強すぎると葉焼けをすることがあります。花後に肥料をやり、日に耐えられるよう栄養分を与えてください。またできれば半日陰になるところにおくときれいに育ちます。
冬は寒風と、それによる乾燥に注意。
植え替え、剪定
山野草として販売されている椿は、だいたい高さ20cm~40cmくらいのサイズが多いと思います。このくらいのサイズの椿であれば、鉢で育てて楽しむことができます。ただ根が鉢いっぱいに廻るとすぐに水切れを起こすので、何年かしたら植え替えをします。また鉢のままにする場合、大きくなりすぎたら剪定したほうが管理しやすくなります。
植え替えは花後すぐ、または秋、寒くなりすぎる前に行いますが、春のほうがいいと思います。根の張りは旺盛なので、鉢底部分の根を軽くほぐして一回りおおきな鉢に植え替えます。または、大きくしたくない場合は少し根を切って同じ大きさの鉢に植えても構いません。その場合、根を切った分量に合わせてある程度剪定して、蒸散作用を抑えるといいと思います。
剪定は花後すぐに行います。暖かい地方なら3、4月ごろ、寒い地方なら5月ごろでしょうか。剪定には強い木ですが、ひこばえや脇枝がどんどんでるタイプの木ではないので伸びすぎた枝を切り詰める程度で十分です。あまり大きくなりすぎた場合は、主幹を3分の1くらい切ってしまっても問題ありません。
遅く剪定してもそれで枯れたり痛むことはありませんが、秋ごろには花芽ができているので遅い剪定をすると翌年の花が咲かなくなります。
肥料
肥料は花後すぐにやり、夏の間は控えます。遅すぎるよりは花がまだついている時にやっても構いません。あまり遅くまで肥料をやると花付が悪くなるという説があります。また11月頃に寒肥をやるのも効果的です。
蕾を間引く
鉢植えでそれほど大きくない木の場合、たくさん蕾が付きすぎていたらあるていど間引いても構いません。高さ20~30cmでまだ太くない木の場合、蕾が3つくらいついているくらいでバランスがいいのではないでしょうか。もっとたくさん咲かせても問題ありませんが、あまり花付が良すぎると木が弱ってしまうことがあります。
増やし方
増やし方は挿木か実生です。挿木は簡単なほうです。あまり遅く挿すとカルスを巻いて発根が翌年になってしまいます。
実生もできます。椿の場合、実生すると親と違う花が咲くことがよくあります。たまたま近くの椿と交雑したからかもしれませんが、たとえばどんちょうという品種などは自家受粉でもいろいろな花がさくことがあるようです。そもそも、いまある品種の多くが交配によるものだとすると、それを蒔いて変化が出るのは当然かもしれません。
いろいろな種類
椿はほんとにいろいろな種類があり、美しい花がたくさんあります。ただ、同じ品種でも年による変化、枝ごとの変化が大きいことに注意が必要です。また花のラベル付で販売されている椿もたくさんありますが、ラベルの種類によってはその品種そのものの写真ではなく、大まかな系統(花の色、形など)別の数種類のラベルを使いまわしていることも一般的です。そのため写真通りの花がさくとは限りません。また毎年かならずおなじ咲き方をするとも限りません。安定している品種もありますが、なかには非常に不安定な品種もあります。過去には、白花の木から真っ赤な花が咲いたこともありました。
覆輪系
玉の浦に代表される覆輪咲の品種は、芸が安定していないことで有名です。玉の浦は芸をすると美しく、交配親としてよく使われていますが、ほとんど赤一色のような咲き方をすることが少なくありません。湊晨侘介なども、年によってはうっすら覆輪ぽくなる程度のことがよくあります。不思議なことに玉の浦を使って作られた他の品種には、比較的安定しているものがけっこうあります。
絞り咲
白地に赤の絞りが入る椿も様々な種類があります。こちらも絞りの入り方はかなり変化することが多い。ただし、ときどき赤一色になってしまう枝があります。
ウイルス性の斑
椿には斑入や葉変りもたくさんあります。そのなかでウイルス性の斑が入る品種もいろいろあります。このウィルスは、ツワブキのウイルスと同じで生育には影響がなく、悪影響はないとされています。実際に、問題なく育ちますし、隣の椿にうつるということもありません。ウイルス性と思われる斑が入る木には、ときに花にもウイルス由来と思われる模様がはいることがあります。そして、その中には非常に美しいものもあります。たとえば桐谷絞り、岩根絞りなどはそうした品種です。
侘助
侘助とは椿の咲き方の一つで、オシベが退化して花粉がでないものをいいます。正確には太郎冠者(別名:有楽)という品種、またその系統の椿を侘助と呼び、それ以外の花粉のでない椿は侘芯と呼びますが、ひっくるめて侘助と呼ぶこともあります。
侘助のいいところは、花粉が落ちないので花が黄色く汚れないところ。そして一重の椿がおおく、お茶花によく使われています。
なお、侘助という呼び方の由来については諸説ありよくわかりません。
海外の品種
海外でも盛んに品種の作出が行われている椿。
海外の花は大輪で、八重咲などの派手な花が多い。逆に日本では侘介など、ちんまりとした清楚な花がたくさんあります。椿に限りませんが、花を見ていると彼我の好みの違いを感じます。個人的には、どちらも好きですが小さくて色対比のいい椿がもっともきれいに感じます。