ひとくちに椿と言っても、雪椿、藪椿、ハルサザンカなど様々な種類があります。また外国産の椿もあり、これは日本のものとは性質がだいぶ異なります。ここでは、椿の仲間を簡単に紹介するとともに、耐寒性の弱い外国椿の育て方を説明します。
普通の椿の育て方は、下のリンク先を御覧ください。
雪椿(ユキツバキ)
国内の日本海側に自生する椿。新潟にもたくさんあります。雪椿の特徴は枝が比較的柔らかくしなること。そのおかげで積雪に耐え、雪の多い地方でも生き残っていると考えられます。山では横に張り出したような姿が多く見られます。
雪椿の見分け方として鋸歯が荒いということがありますが、実際には交雑種などもたくさんあるのでなかなか判断するのは難しいようです。もうひとつの特徴はオシベが黄色く、癒合していないことです。ヤブツバキのオシベは根本でくっついていてひとかたまりになっていますが、ユキツバキは一本一本がばらばらになります。
ただしヤブツバキとの交雑種もあり、とくに人為的に交配したものはどちらと決められないものもあると思います。ヤブツバキとユキツバキの自然交雑種はユキバタツバキと呼ばれます。
なお雪椿は雪には耐えますが、やはり寒風は苦手です。関東では冬の北風で葉を傷めないように注意します。
ユキツバキ、ヤブツバキ、ユキバタツバキの国内の分布状況などを見ると面白いです。興味がある方は調べてみてください。
ベトナムの椿
ベトナムあたりにも椿の仲間が自生しています。日本の椿と違い、葉がより大きく、てかてかした光沢があり、葉脈もくっきりしています。独特な美しい花があり、金花茶、ハイドゥンなどが有名です。分布は中国まで広がっていますが、比較的温かい地方の椿です。
金花茶(Camellia chrysantha)は日本にはない黄色の花が魅力的で、日本の椿に黄色を導入するために交配も盛んに行われました。いまでは日本椿の姿でかなり黄色い椿がでてきました。
ハイドゥン(Hai duong)は蝋細工のような花が美しい銘花です。濃いピンクの肉厚の花弁は日本の椿にはない独特なものです。蕾のうちから美しい色をみせ、咲く前から楽しめます。なおハイドゥンキング、ハイドゥンクイーンと呼ばれるものもあり、それぞれ違うもののようです。一般にはハイドゥンキングが多く出回っているらしく、こちらはより耐寒性の高いタイプのようです。
耐寒性の弱い椿の育て方
基本的にはその他の椿と同じ育て方で構いませんが、冬の管理が異なります。
ベトナムの椿は日本の物よりも寒さに弱いため、屋外での地植えは推奨できません。具体的にどれくらいまで耐えられるのかというと、0℃までは問題ありません。
ただしこれまでの経験でいうと、気温よりも風にあたった場合の体感温度のほうが大切のようです。
つまり冬の寒風に当てないことが大切です。ハウスにいれておけば、新潟では無加温でも一応は問題なく育てられます。
0℃では育てられないとか、5℃以上必要という説明もたまに見ますが、屋外の風にあてないようにすれば意外と耐えるものです。一冬に一度は-5℃くらいまで冷え込む日がありますが、それでも寒さで枯れることはほとんどありません。
ただし北海道などの寒冷地で、屋内でも気温が氷点下5℃以下になるところでは、加温しなければなりません。
もちろん可能であれば冬でも5℃前後あったほうが生育はよくなると思います。立派になると、葉もかなり大きくなります。
その他の中国、台湾の椿
金花茶系のほかにも、違うタイプの椿があります。
大頭茶(ダイトウチャ)(Polyspora axillaris)
これはベトナム、台湾、香港、中国南部に自生するお茶の仲間で、白い花を咲かせます。白い花に黄色いオシベが平開し、英語ではフライドエッグプラントと呼ばれているそうです。
花弁は薄く、葉は楕円形で大きめで日本の椿とはだいぶ異なります。早咲で年内に咲いてくることもあります。
かつてはゴールドニア(Gordonia)という椿の仲間と同じ分類をされていましたが、いまはそれとは異なることがわかりポリスポラという別属に分類されているようです。ちなみにゴールドニアは東南アジア中心に40種近くが知られていますが、なぜか南アメリカにも2種類自生があるそうです。
栽培の際は強い日を避け、冬は寒風を避けます。日本では寒い時期に咲いてくるので花弁の薄い花は寒さですぐに茶色くなりがちです。
ヒメサザンカ(Camellia lutchuensis)
これは沖縄~台湾、中国南部に分布する仲間で、非常に小型の花を咲かせるタイプです。また花に香りがあることも特徴です。これも交配に利用されており、これをつかって作出されたものは香り椿と呼ばれています。
原種に近いものではエリナという品種があります。これは中国の原種からみつかったもので、外弁が軽くピンクに色づき、花柄がやや長いという特徴があります。同じエリナの枝変わりなのか、エリナ・カスケードというタイプもあり、こちらは木がしだれるように横に伸びていく面白い特徴があります。
アザレア椿(Camellia changii)
1984年に発見された中国原産の椿。自生地には1000本程度しかなく、保護のため場所は非公開だったそうです。当初はCamellia azaleaと呼ばれていました。それでアザレア椿と呼ばれているのだと思います。
花は朱色で、かなり大きくなります。
この椿の最大の特徴は、夏から花が咲くということです。他の仲間が冬から春に咲くことを考えると、これはすごいことだと思います。花付はそれほどよくないようですが、開花期は長く、夏に咲いたあと秋ごろにまた咲くことがあります。
葉には鋸歯がなく独特な姿です。ゴールドニアなどにすこし似た葉姿かもしれません。寒さに弱いことが予想されますが、無加温のハウスで普通に育っています。金花茶やハイドゥンよりは耐寒性がありそうです。
サザンカ
サザンカも椿の仲間です。サザンカにもたくさんの品種が存在します。椿よりも小ぶりな花が多く、花弁の先端がくぼんでいるものが多い。また椿は花弁、オシベがつながっていて、花が終わると花全体が丸ごと落ちますが、サザンカは花びら一枚ずつ散ります。もうひとつ大きな違いは花期が早いことで、早いものは11月ごろから咲き始めます。
サザンカも椿と交雑するため、交配も行われています。サザンカと椿との交配種はカンツバキ、ハルサザンカとよばれ、これもそれぞれ多くの品種があります。大雑把に分けると、カンツバキはサザンカに近く小型で早咲き、ハルサザンカは椿に近く春に咲きます。
茶(チャ)
茶も椿の仲間です。飲み物のお茶にする茶はほとんどがやぶきた茶で、ほかにもいろいろな品種がありますが、園芸用の品種はそれほど多くないようです。数種類の斑入品種の他に、雲竜茶、紅花茶などがあります。