フクジュソウ(福寿草)はキンポウゲ科の植物で、早春を彩るおめでたい花として日本ではおなじみの植物です。
春の野山の一面を埋め尽くすような黄金色の姿もいいものですが、時折発見される珍しい咲き方のフクジュソウも珍重され、古くから愛でられてきました。江戸時代にはすでに「草木奇品家雅見」などで品種が紹介され、一時は50を超える品種があったといいます。
近年、各地で展示会が行われるなどしてフクジュソウの魅力が再発見されています。変わったものはもちろん、ごく普通のフクジュソウでも、それ自体が美しい部類の植物なのではないかと思います。
品種にかかわらず、基本的な育て方は一緒です。ここではフクジュソウの育て方をご紹介しようと思います。
基本的な育て方
フクジュソウは落葉性の多年草で、春に花を咲かせ、葉を展開し、夏以降は地上部はなくなります。やや大型になりますが、地上部のある期間は比較的短く、そういう意味ではニリンソウやカタクリなどと同じくスプリング・エフェメラルの一種としてもいいと思います。
地上部のある期間が短いため、どうしても花や葉のある春の期間だけ世話をしてあとは忘れてしまいがちですが、地中でも通年成長していることを忘れずに管理することが大切です。基本を守れば、地中にある分余計な手間がかからず、育てるのは比較的かんたんな植物です。
置き場所
置き場所は通年ひなたで構いません。5月上旬の日差しが強くなる頃に明るい日陰に移すと更にいいです。
ただし、雨ざらしの状態を嫌います。野生ではなだらかな斜面によく見られ、自然と水はけのよくなっている環境でよく育っているようです。乾燥には比較的強いので梅雨前に屋根の下に移すか、水はけの良い土で植えることが大切です。
用土
フクジュソウは固くまっすぐな根を真下に伸ばしていきます。細かなひげ根もないので、粗めの土だけだと根と根の間に入り込まず保水性が心配なので、小粒の用土も混ぜて植え込みます。庭植えの場合、さらさらの赤土や畑の土でもよくできますが、その場合は水はけよくすることが大切です。
肥料
フクジュソウはあまり肥料がいらないという話を聞いたことがありますが、それは間違いです。フクジュソウにも肥料は必要です。花後と秋の肥培が大切です。とくに、葉の展開している期間が短いため、花後すぐに置き肥をしてしっかり肥培するようにします。
水やり
水は一般的な植物と同じく、用土の表面が乾いたらたっぷりやる、という基本どおりで問題ありません。花時期や葉の展開時は、乾燥や水切れでしおれないように毎日たっぷりやってかまいません。夏以降も、地上部はなくなっていますが土が乾いたら忘れずに水をやります。
季節ごとの管理
時期別に注意すべき点を以下に記します。
春の管理
秋以降、しっかり芽が太っていれば、春は華が咲くのを楽しむのみ。ただし、寒風による乾燥、凍結には注意しましょう。落ち葉の下などでなく路地の吹きさらしにある場合、花が咲くまでは水を切らさず乾燥したらたっぷり水をやります。
特に蕾が膨らんできて花が咲き始めるころ、まだまだ寒く冷たい風が吹き付けることがよくあります。あまり風に当てるとせっかくの花がいたんでしまうので、場合によっては風よけをしましょう。
花が終わると葉が展開してきます。フクジュソウの葉はどんどん大きくなります。その分、水もよく吸い上げるので、水切れにさらに注意が必要です。ポットや鉢が小さい場合、朝に水をやってもその日のうちに萎れかかっていることもありますので、水を切らさないようにします。
またこの時期の肥料がとても大切です。地上部がある間に十分成長できるよう、花が咲く前後に肥培しましょう。また、特に種を蒔いたりする必要がなければ、花が終わりかけたら花茎ごと切り取ります。そのままにしておいて種がつくと株が弱ることがあります。
5月~夏の管理
その後の管理で気をつけるのは、基本的には水の加減だけです。
4月ごろから、可能であれば半日陰の明るい場所にうつします。直射日光下では日が強いため葉が焼けやすくなります。しっかり肥料が効いていれば問題ありませんが、地域によっては半日陰のほうが成長がよくなります。
葉がある間は、しっかり水をやります。その後、葉が枯れてきてからは、土が乾いてからたっぷり水をやります。極端な多湿は根を痛める原因になります。できれば梅雨時などは雨をさけ、濡れっぱなしになるのを避けます。ただし、水のやり忘れには注意します。
秋の管理
地上部がなくても、福寿草は成長しています。春だけ存在しているような印象ですが、実際には通年成長を続けています。これを忘れないことが栽培のポイントです。うまく育っていれば、この時期にはすでに来年用の芽が出来上がり、成長し始めています。
10月頃、追加で置き肥を与え、さらに芽の成長を促進させましょう。夏から冬にかけて一気に芽が大きくなります。
また、この時期に芽を害虫にかじられないように注意しましょう。地中にあるうちに、せっかくの芽がかじられていることがよくあります。ナメクジやヨトウムシなどのせいだと思うので、対策をしっかり立てることが大切です。
冬の管理
冬は極端な乾燥を避けさえすれば、栽培上特に心配する点はありません。寒さにも強いため多少の低温でも痛むことはありません。ふつうは-5℃程度の気温には楽に耐えられます。逆に、加温すると芽が徒長したり、早く展開しすぎたところにボトが出たりするので、なるべく芽が固い状態で暖房などを指定ない場所におきます。
お正月用に加温して早めに蕾を出させた苗や、芽を大きく露出させて植え込んだものについては、凍結によって芽が痛む事がありますので多少の保護が必要かもしれません。
植え替え
植え替えは芽が充実した秋に行います。地上部が枯れた夏以降ならいつでも構いませんが、秋がもっとも植え替えしやすい時期だと思います。
古い用土をよく落とし、新しい用土で植え付けます。あまり浅く植えすぎず、芽の先端が5mm~1cm土から見える程度に植えます。植え替える際、古くなって黒ずんだ根は切っても構いませんが、茶色い根や、その先端に細かいひげ根が生えているものはなるべく切らずに残します。
古い根は黒くなって、その上に新しい根の層ができるようにして増えていきます。古い黒い部分はいずれは腐ってしまいますし、また鉢内を狭めてしまいます。古い根の付け根あたりが黒く塊状になっていたら、切ってしまっても構いません。
中粒と小粒を半々くらいに混ぜた土を使うと、根の隙間にも土が入りやすく、通気性も水はけもよくなります。植え替えるときのコツは根の隙間にしっかり土をいれることです。特に芽の裏側、株の真下に隙間ができないようにしっかり土をいれます。元肥はマグアンプKの小粒~中粒を少量。やり過ぎはよくありません。
鉢は品種にもよりますが、1株あたり4号前後のものがちょうどいいと思います。根が長く伸びるので、浅いものよりは深めの鉢が育てやすい。それか、少し広めの鉢に入れて根を横に広げるようにします。
傷んだ株も、どんなに小さくても芽がついていればまだ育つ可能性があります。黒ずんだ部分は取り去り、消毒し、丁寧に植え込みましょう。
株分け
福寿草は根の層がいくつも重なるようにして増えていきます。それぞれの層の中心に、芽ができています。その層を意識して分けるようにすると、比較的分けやすいかと思います。
株分けの際にハサミを使うと、根まで切りすぎることがあります。マイナスドライバーやカッターを使うと外したいところだけピンポイントで切れ目を入れることができます。
福寿草の株分けは比較的難しいです。理屈から言えば1つの芽にたいし根がある程度つくように分ければ、芽は成長できますが、たくさんの芽が同じ場所からから出ている事も多いので、1芽ずつすべてバラバラにしようとは思わず大まかに分割するようにしたほうがうまくいきます。
株分け後、切断面は消毒します。数が多い場合はまとめて水和剤に浸しますが、少量の場合、切り口に防腐剤を塗るほうが簡単です。