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クマガイソウの育て方

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ラン科の中でも独特な花で人気のあるクマガイソウ(Cypripedium japonicum Thunb.)。

日本全国の杉林などに多くみられ、薄暗い林床などに自生する植物です。場所によってはよく群落を作り、数多くのクマガイソウがいっせいに花をつけている様子は圧巻です。

花もそうですが、対生する団扇のような葉をもつ独特な草姿もなかなか魅力的だと感じます。

しかし、人気があり日本各地に自生がある割に、栽培の難しい植物として知られています。ここではクマガイソウの育て方を説明します。

クマガイソウを庭に植える場合

クマガイソウの栽培が難しい理由のひとつに、地下茎がよく伸びるという特徴があげられます。クマガイソウの地下部は5cm程度の節が連続した姿をしていますが、この地下茎がかなり伸びます。ふつうのポットに植えるとどうしても芽が縁にぶつかってしまい、それが生育できない原因とされます。15cmポットでも狭いくらいです。

節が年々増えて伸びていきます。

実際に植えると確かに広い面積を必要とするのがよくわかります。過去の経験では、植えてから1、2年後には最初に植えた場所から半径数十センチ位離れた場所で芽がでてきました。

そこで、クマガイソウを育てる場合、最初に検討されるのが庭植えです。

庭に植えてスペースの問題を解消

庭といっても広さは様々でしょうが、ポットよりも広い面積なのは間違いありません。庭植えにすることで、クマガイソウが成長に必要とするスペースの問題が解消されます。

ただし日なたの花壇のような場所は適しません。クマガイソウは林床に自生する植物ですので、日陰になる場所に植える必要があります。

日陰になる場所に植える

庭に植える場合、日陰を選んで植えましょう。クマガイソウは日に弱く、直射日光に当たるとすぐに葉焼けしてしまいます。春先は日にあたってもいいという人もいますが、おそらく通年日陰のほうがいいはずです。

自生地はかなり薄暗い場所が多い気がしますが、必ずしも暗い場所である必要はありません。直射日光をさえぎるようにしてください。日当たりのよい場所しかなければ、寒冷紗などをつかい日陰になるようにする必要があります。

明るい場所は向きませんが、寒冷紗などで日陰を作れれば花壇のような場所でも底白だれてられるかもしれません。

数カ所に分けて植える

地植えの場合、他の植物にも当てはまることですが、どうしてもその場所が植物に合わないことがあります。土質や水はけなど、庭植えの場合コントロールしきれない要素がいろいろとあります。日陰であったり、斜面であったり条件を満たしているように見えても、なぜか根付かないということもあります。

可能であれば2、3箇所に分けて植えてみましょう。危険分散です。

地植えにしたクマガイソウ。4芽に増えている。

地植えにしたクマガイソウ。4芽に増えている。

寿命や植え替えなど

こちらで過去に庭植えした例では、1芽植えたものが翌年3芽になり、その後も数年かけて増え続けて直径2メートルくらいの範囲に渡って十芽以上の株立になりました。全てが花芽ではありませんが、5芽くらい花をつけたことがあります。その後、徐々に本数が減り、いまでは1、2本出ているくらいです。

別の場所に植えたものは花付はそれほどよくありませんが毎年4芽くらい顔を出します。

この経験からすると、うまく根付いた場合はほったらかしでも10年以上は育ってくれるみたいです。

もちろん庭植えの場合、大雨や日照りなどの気候の影響を直接受けるため必ずしも長期間生存するとは限りません。ただよく言われるのは、長年栽培していると忌地現象を起こすことがある、ということです。こちらで植えた例でも、最盛期には十数芽立ちだった株が徐々に少なくなっています。

他のラン科、カキランも同じようなことが起きます。そのため、数年に一度は掘り起こして、土を変えたり場所を変えたりして植え直すといいと言われています。

鉢、ポットで育てる場合

どちらにしても庭植えの場合、庭があることが前提となります。庭がない人はどうするか。どうにかして容器で育てるしかありません。

まず、鉢植えで育てることは可能なのか。よく栽培困難といわれていますが、結論から言うと栽培は可能です。かんたんではないかもしれませんが、鉢で上手に育ててる人はたくさんいます。過去、鉢植えで、一芽から数十芽に増やしていた人もいます。

必要な鉢のサイズ

鉢植えにしても、クマガイソウのよく伸びる性質には変わりありません。なるべく大きな鉢が必要となります。

過去に上手に育てていた人の例では、直径30cm以上、尺五寸(直径45cm)くらいの駄温鉢で育てていました。

おそらく植え付ける苗の大きさからして、15cmポットくらいなければ入らないのではないかと思われます。それが生育する面積を考えると、たしかに尺鉢以上の大きさが必要になりそうです。

鉢の深さはそれほど必要ありません。広さがあれば浅鉢でも構わないようです。また上記の例では駄温鉢で育てていました。駄温鉢は見た目や重さを気にしなければなんでもよくできる鉢のひとつです。

発泡スチロールで育てる

大きい鉢がなかなか手に入らない場合は、発泡スチロールの箱で栽培することもできます。厚みのある魚箱などの大きめなものの底に穴をあければ、そのまま即席の大鉢になります。発泡スチロールは保温(保冷)効果があるため、高山植物などの栽培に好んで使う人もいます。

発泡スチロールの場合、水加減が普通の鉢とはすこし変わるのでその点に注意が必要です。水持ちがいいので、通常より少し控えめ位にするといいでしょう。また見た目の問題もあります。飾ったりするのには向かないですね…。

水やり、肥料、用土

庭植え、鉢植えによっても異なりますが、基本的には水の好きな植物です。また空気の乾燥も嫌います。ある程度湿度のある場所で、極端に水を切らさなよいようにして育てます。

水加減

うまく育てば9月ごろまでは葉が残ります。その後、地上部は枯れていきますが、地上部がなくなっても土が乾いたら水が必要です。

庭植えの場合は雨次第というところですが、先に例をあげた地植えの場合はかなり水のたまりやすい場所に植えました。他の植物はなかなか根付かない場所ですが、クマガイソウの場合水がすこし多めでも問題ないようです。

水は、葉の展開時はできればあたまからかけないほうがいいです。葉の付け根や開きかけの筒状になった部分に水がたまり、そこから腐ってしまうことがあります。

用土

水を好むというのと矛盾するようですが、水はけのよい土で植えたほうがいいようです。鉢で育てる場合はサラサラした水はけの良い土で根詰まりしないように植えていました。

肥料

庭植えの場合は、庭木にやるついでに有機肥料を与えるくらいでいいと思います。

鉢植えで上手に育てていた人は、液肥だけを与えていました。固形肥料を春と秋、少量ずつ与えてもいいと思います。液肥だけで育てていた人は、液肥を頻繁に与えて育てていたようです。それで最初は1芽だったものを数十芽に増やしていました。