雪割草(ゆきわりそう)について その2

雪割草の解説です。その1に続き、ここではどういった花が評価されるのか、雪割草を選ぶときのポイントなどを説明します。

どんな花がよい花なの?

即売コーナーを見ると、一鉢数百円位のものから数千円、なかには数万円、十万円を超えるようなものまであります。一体どういう基準で値段がつけられているのでしょうか。 あくまでも私見ですが、よい花の要素と、どのように値段が決まるのかを簡単に説明したいと思います。

値段と花の美しさは単純に比例するものではありません。値段がつけられる際には花の美しさの他に、希少性が大きく関係してきます。つまり珍しいもの、数の少ないものが高価になります。これにより、咲き方である程度値段の上下がついてきます。

咲き方の違いですが、普通の雪割草は標準花と呼ばれる花をつけます。外側に花びら(形態分類的にはガク片だそうですがここでは花弁とします)があり、真ん中にオシベとメシベがある一般的な花型です。これに対し、雪割草の中にはオシベやメシベが花びらに変化しているものがあります。こうした花は「変化咲き」と総称され、突然変異的に生まれたもので、発生率が少なく、珍しいものです。そのため、一般的に価格は変化咲>標準花となります。

ただし変化咲にもいろいろな種類があり、それぞれで珍しさの度合いが変わります。また標準花でも様々な花色の変化があり、その時々の流行もありますので、実際の価格は様々です。

誕生してから一定の評価を得られた花は名前がつけられ、銘品と呼ばれるようになった花でも希少性により価格が大きく変わってきます。例えば「安寿」という美しい銘花がありますが、増殖がよいため普及し安価になりました。逆に新たに作り出されたものや、昔からあるのになかなか増えないものなどは比較的高価です。 つぎに咲き方とは関係なく花の評価の基準を説明します。

花の評価

評価のポイントはいくつかありますが、重要な点を絞って説明します。他にもたくさんありますが、ポイントは以下の3点です。

1.花型の良さ
2.花の大きさ
3.色、芸(特徴)がはっきりしていること

1.花型の良さ

個人的にはもっとも重要視されるべき点だと思います。というのは、花型の良い花というのはありそうでいてなかなかないものだからです。雪割草は基本的に6枚の花弁からなります。それぞれの花弁がたっぷりと丸く、厚みがあり、お互いに重なり合い、全体でまんまるとなるようなものを花型がいいと評します。花弁の形が不揃いだったり、花弁が細く弱々しかったり、花弁が薄く縁がよれていたりするものは花型が悪いといいます。普通の花は星形になっています。円形をなす正形花というのはありそうで滅多にありません。

2.花の大きさ

これは単純に花が大きいということです。小さいほうが可愛らしいという人もいるかもしれませんが、同じような色と形の花で花の大きいものと小さいものがあった場合、大きい方が素直に見応えがあります。

3.色、芸(特徴)がはっきりしていること

色ははっきりしたもの、芸もはっきりしたものが好ましいと思います。例えば単に赤花、紫花といっても、最後まで色の褪せないビロードのような濃色のほうがきれいでしょう。また赤や紫の花弁にはっきりした白色のおしべをもつ花など、対比のはっきりしたものも美しく評価できます。芸というのは様々な種類がありますが、例えば絞り、ぼかし、覆輪など花弁の模様も芸のうちです。そうした個性がより際立っているものが評価されることになります。

このほか、全体の草姿など様々な要素がありますが、花そのものの評価のポイントとしては主に上記の3点です。3点全てで合格となるような花はなかなかありません。色は良くても花型が悪かったり、端正な花でも小輪だったり・・・。生産者や熱心な趣味者の方は理想的な花を目指して、交配に明け暮れています。

以上ですが、上記のポイントを花選びの参考にしてよい花を探せばよいと思います。高価であることと花が美しいことはイコールではありません。例えば「F1」としてごく普通の標準花に高い値段がついていることもありますが、これはその花を蒔くと優秀な花が生まれるためです。つまりその遺伝子に値段がついているわけです。また花の好みもありますから、好きな花が安く買えてラッキーな事もあれば、自分には理解できない高値の花もあると思います。なかには単純にラベルのつけ間違いというのもあるかもしれません・・・。

買い方・選び方

葉っぱの色が濃く、中心の芽が丸くふくらんでいるものを選びましょう。葉が黄色くなっていると肥料不足か葉やけの可能性があり、花が本気をださない可能性があります。とんがった芽のばあい咲かないこともあります。 ときどき、葉っぱや芽が残ったまま根が腐っていることがありますので、心配ならお店の人に確認してもらいます。

すぐに飾ったり、花を楽しみたい場合は、咲いている時期に花/蕾がたくさんついていて、すっきりと上に伸びているものを買うとよいでしょう。地面近くで伸びずに咲いてしまっていたり、花茎があまりに横に倒れるように伸びているものは鑑賞するのには向かないでしょう。

育てた経験がありうまく育てられる人は、株の良し悪しより花で選んで構わないとおもいます。多少弱っていても、きちんと芽があり根が残っていれば大丈夫だと思います。 実生初花、または2年目くらいの花は、翌年以降力がつくとよりよい花に変身する(本芸をする)可能性がありますので、そうした苗もお勧めできます。

交配実生苗やF1、F2などとかかれたものを買う場合はお店の人によく確認しましょう。意味が分からないまま買うとがっかりすることになりかねません。 例えば変化咲交配実生初花という場合、変化咲が咲く可能性がある交配ということですから、必ず変化咲が咲くとは限りません。一般的には25%位の確率で変化咲が咲きます。

F1というのはふつう変化咲の交配親のことで、それを蒔けば変化咲が咲くものをいいます。F1のなかにもはずれ(いくら蒔いても標準花しかでない)がありますし、間違ってF2をF1として買った場合も、いくら蒔いても標準花しかでない可能性があります。
さて、次はせっかくの雪割草をなるべくうまく作る方法を考えてみます。

雪割草を枯らさずに育てる

基本的な育て方はすでに書いたとおりですが、話を聞いているとやはりうまく育てられないとか、毎年枯らしているという人がいます。雪割草は本来丈夫な植物です。葉っぱがなくても芽だけで生きていますし、高山植物のように暑さに弱い訳でもありません。それでも枯れるというのは、栽培の上でなにかを根本的に間違っている可能性があります。そこで、どうしても枯れてしまう人のために、ポイントを絞って枯らさないための雪割草の育て方を解説します。

ポイント1 遮光!

さんざん言われていることですが雪割草を栽培する上でのポイントは、夏場の遮光です。秋までに葉っぱがなくなるというひとは、遮光が甘い可能性を考えましょう。他の山野草と同程度の遮光でいいと考えている場合は、遮光率が足りません。半日陰、日中陽が当たらない場所、という程度では甘いです。

雪割草は90%の遮光が必要です。90%の日陰というと、目が慣れないと暗くて新聞が読めない程度の暗さです。自生地では他の草木が茂った下、落ち葉の下という真っ暗な環境で生育しています。つまり、直射日光が一切なくても問題ないと言うことです。

明るくてもいいのですが、直射日光を避けてください。日が強すぎると、夏の間は元気に見えても秋口から葉が痛んできます。 寒冷紗をすでに使っている場合は寒冷紗を二重にしてください。70~80%遮光のものを二重にかければほぼ日差しは防げます。また、西日にも注意してください。天上の日よけをしてあっても、棚の脇が無防備になっていることがあります。ダイオフララ(細切りにした寒冷紗のようなもの)やスダレなどを使い、脇から差す光も防ぐようにしてください。 このように陽を防ぐことで、直射日光による葉やけは防げるはずです。

ポイント2 肥料!

夏を過ぎるころから葉先が黒く痛んできた、根っこがとけて芽が抜けた・・・。これも雪割草がだめになるよくあるパターンです。とくに、きちんと植替えたのにだめになってしまう場合。病気などを疑う前に、まず肥料をやりすぎていないか確認してください。植替えなくても数年耐えられるような丈夫な植物です。きちんと植替えて水やりも普通にやっているのに、夏すぎからだめになってしまうという場合、置き肥のほかに元肥を入れすぎていませんか?土に混ぜ込むタイプの元肥は、高温になる夏には成分流出量が増える可能性があります。そのためたくさん入れた場合、夏にそれが一気に溶け出して根を痛めることがあるのです。水のやり方にむらがある場合特にそうなりやすい。 肥料が隠れて見えないため、意外とこれに気がつかずに失敗を繰り返している可能性があります。他の常緑植物の話ですが、7月ごろから急に葉が痛んできて根も黒ずんで腐ってしまったものがあり、おかしいなと思って鉢を開けてみたら元肥がごってり入っていたことがありました。

肥料のやりすぎはやらないのと同じくらいよくありません。マグアンプKなどは非常に便利な肥料ですが、他の置き肥のサポートとして使い始めたほうが無難です。マグアンプKの大粒の場合、7.5cmポットで1粒、9cmポットで2粒くらいから初めて、様子を見て徐々に量を調整してください。

ポイント3物理的に腐らせない!

病気、ばい菌がつかないよう、基本的な管理を怠らないようにしましょう。まず、花が終わったら花茎を根本から取り去りましょう。咲ききらない蕾が芽もとに残っていた場合、これも取り除きます。散った花びらが株元に落ちていた場合、吹き飛ばしましょう。ハウス内や室内においた場合、このようにしないとカビが生えて腐ってしまうことがよくあります。逆に花柄除去をまじめにやれば殺菌剤など特にまかなくても腐る可能性はだいぶ減ります。

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