イワカガミは日本の各地に自生するイワウメ科の植物で、山野草としては非常にポピュラーな部類に属します。初春に咲くピンクの花だけでなく、つややかな光沢をもつ葉姿も美しい、人気のある植物です。
ただ、人気の割には育てづらい、難しいという声をよく聞きます。
特別な種類をのぞいて、高山植物というわけでもなくそれほど弱くはない植物なのですが、確かに長期間維持するためにはそれなりの育て方が必要かもしれません。
ここではイワカガミの育て方を説明します。
基本的な育て方
イワカガミは高山植物ではないので、暑さには比較的たえます。しかし乾燥に弱く、空気中の湿度が足りないと葉が傷んでくることがあります。
また根が細く、植え替え時に地中の茎を短く切りすぎると弱ってしまうことがあります。とくにイワカガミは春に剥がし物と呼ばれる山採り品も多く出回りますが、そうしたものは丁寧に植えないと根付く前に枯れてしまうこともあります。
そのため、まずは新葉が展開して落ち着くまで、水を切らさず様子を見ることが大切です。一度定着した株はわりと丈夫に育つようです。
春の買い方、選び方
まずは春に元気な株を選ぶことから始めましょう。
よく出回る山採りのイワカガミには、太い枝に申し訳程度のひげ根がついているだけのものもよくあります。丁寧に植えればきちんと生育しますが、中にはあまりに根が短すぎたりして、うまく育たずに枯れてしまうものもあるかもしれません。
イワカガミは枝の先端から数枚の葉がでていて、その中心に翌春展開する芽がついてます。芽が黒ずんでいたり、しなびているものは避けましょう。葉が多少傷んでいるのは問題ないようです。
春以降、新しく出てくる新葉がしっかりしていれば大丈夫。また、枝が表土からあまり飛び出すぎているものは、かっこ悪いので避けましょう。
春から夏までの管理
春はよく日に当てて、水もたっぷりやって構いません。とくに新葉が展開するまではある程度日を当てて、しっかりした葉になるように作ると後々の生育がよくなります。またこの時期に肥料をやります。
そして、5月以降日差しが強くなってきたら、半日陰にします。実際には水を切らさなければ直射日光にも耐えますが、昨今の夏の暑さ、日差しの強さを考えると半日陰程度の場所においたほうが生育はよくなり、安全だと思います。
夏に葉が萎れたり枯れてくるのは、一つには根が弱く傷んでいるため。もう一つは、空中湿度が足りなく空気が乾燥しているためです。
自生地は山の斜面のようなところに多く、水はけのいいところに生えています。ですので、腰水にしたり常に水浸しにしたりする必要はありません。そのかわり湿気のあるところを好むので、あまりに乾燥する環境では表土にミズゴケを載せたりして湿気が保たれるようにします。
秋以降の管理
夏を過ぎて葉がしっかり残っていれば問題ありません。水やりも夏に比べると適当で構いません。あとは引き続き、極端な乾燥や寒風を避けてなるべく葉をきれいに保つようにします。
常緑なので、冬場の凍結や乾燥で葉が傷まないよう、あられやひょうに注意してなるべくきれいに育つようにします。雪の降る地方であれば、雪の下にするのも安全な管理方法です。
植え替え
イワカガミは根が細いため、植え替え時になるべく傷めないことが大事です。多少根が切れるのは仕方ないので、植え替える場合はできるだけ痛みの少ない秋か春早い頃に植え替えます。夏の植え替えはやめましょう。
また、雑木の根本に寄せ植えのようにしておくと調子がいいことが多いようです。土が適度に保水され、多少の日陰もできるからでしょうか。寄せ植えの場合数年くらいはほったらかしでも元気に育つことが多いです。
イワカガミの種類
オオイワカガミ、コイワカガミと呼ばれるものもありますが、自生地や個体によって花色の濃淡、葉の大きさなどに変化があるため分類は難しいと思います。オオイワカガミと普通のイワカガミは同一のものであるという意見もあります。
久住イワカガミ
産地がはっきりしていて、形態的にも違いがはっきりわかるものに名前がつけられることはあります。たとえば久住イワカガミは久住山産のイワカガミで、葉の小さいタイプです。
ヒメイワカガミ
ヒメイワカガミも普通のイワカガミとははっきり異なるタイプです。葉は相当ちいさく幅2cm程度で鋸歯も荒い。そして、花色が白いことが特徴です。
ヤマイワカガミ
ヒメイワカガミよりも若干葉が大きくなるタイプ。こちらも花は白です。ただし、比べたことがないので厳密な違いがあるのかどうかはわかりません。