㈲日本山草加盟・日本雪割草協会会員

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雪割草とは

普通よりちょっといいユキワリソウの画像

雪割草(ゆきわりそう)とは

一般に山野草として「雪割草」とよばれるのは、キンポウゲ科ミスミソウ属の多年草、オオミスミソウのことです。日本海側の林床に自生し、特に新潟県に豊富に産します。 他にもミスミソウ、ケスハマソウなどが同種の仲間ですが、オオミスミソウはそれらに比べ赤、紫、白と色のバリエーションが多いです。現在では交配で様々な美しい花が作出されています。 ミスミソウ、ケスハマソウとはそれぞれ若干の違いがありますが、ぱっと見には違いがよくわかりません。(ケスハマソウは柱頭が赤いなど、見慣れてくればだいたい分かります)またミスミソウ、ケスハマソウも同じように「雪割草」として流通しているものがあります。園芸的にはあまり区別せずひっくるめて「雪割草」と呼ぶことが多いです。 学名で「ユキワリソウ」といったばあいはサクラソウ科の全然違う植物のことになりますが、ここではミスミソウのことを呼びます。

もともと日本各地で初春に咲いてくるいろいろな植物が雪割草と呼ばれていたそうで、英語のSpring ephemeralとやや似た意味合いで使われていたように思いますが、現在では雪割草といえばここで扱うミスミソウ属の植物をいうことが多いようです。 ここでもキンポウゲ科ミスミソウ属の「雪割草」を説明していきます。

花の種類、特徴

雪割草を見てまず驚くのはその変異の豊かさです。白、赤、紫と大別される色の豊かさだけでなく、おしべめしべが全て花弁化した千重咲、一部のみが花弁化した二段咲、それぞれが部分的に花弁化した三段咲、日輪咲など、同じ花とは思えないような変化が見られます。しかもそれは人工的に作られたものではなく、自然界に昔から存在していたものなのです。他の植物でこれほどのバリエーションがあるものはなかなかないのではないのでしょうか。 花としての特徴は、開花時期の早さがあげられます。春の花の中でも一番早いほうです。他の植物がまだ蕾すら見せない頃に春一番で咲いてくる雪割草はまだ雪の残る時期に目を楽しませてくれます。また花付がよく、比較的花持ちがよいことも美点の一つです。同じ早春の花であるカタクリやイチゲなどは比較的早く花が終わり儚い美しさを持ちますが、それに比べると一つの芽からいくつもの花をだし、順番に咲いてくるため、結構長い間花を楽しむことができます。常緑である点も雪割草の存在感を増している点かもしれません。斑入などであれば花が終わった後も一年中鑑賞することができます。 雪割草は小型の山草です。ヘレボルス・オリエンタリスなど大柄な植物に比べると手のひらサイズの植物です。今でこそ大鉢で立派に作ることが盛んに行われていますが、せいぜい4号鉢くらいの大きさで十分立派な株に生長します。またそれくらいの株で咲かせるのもあまり仰々しくならず風情があっていいものです。 それから、一般の平地の山野草と同程度の丈夫さで、育てやすい植物です。高山植物やラン科の植物に比べると遙かに育てやすく、毎年咲かせるだけであればむしろ易しい部類にはいります。元来生命力の強い種なのか、6cmポットのまま4年ほど植替えしていない苗でもだいたい生き残ってます。

めしべおしべが全て弁化した千重咲 標準花の銘花「瑠璃」 きれいな三段千重

育て方 通年の管理

ここでの説明は基本的には新潟基準となりますが、できるだけ全国的に通じるように書きたいと思います。育て方というのは地域、気候によってことなります。特に日本は地域によって四季の訪れに大きな違いがありますので、一概に4月はこうして、10月はこうしてとは言いづらい点があります。雪割草についてはさんざんいわれているので簡単に説明しますので、適当に現地にあわせて解釈してください。

花時期に買ってきたものは、十分日の当たる場所において、花を楽しんでください。花が終わったら花を切ります。花茎の根元から切り取ってください。そして古い葉も一緒に茎の根元から取り去ります。この頃には芽元から新しい葉が展開し始めているはずです。このときに肥料を与えます。 日差しが強くなり始める頃に、日陰に移します。だいたい桜の花が散り、葉桜になる頃です。植物をおいている棚の下や建物に挟まれた軒下など、直射日光が当たらない場所に移してください。できれば風通しのよい場所がいい。 水やりは土が乾いてからたっぷりやって下さい。やり過ぎよりは辛めがいいようです。そのほうが根の生長、花付がよい気がします。

秋から冬にかけては土もそれほど乾かないので水やりの頻度も必然的に低くなります。10月頃にもう一度肥料を与えるとなおよいでしょう。これだけで、来年の春も立派に花を咲かせてくれるはずです。 関東地方など、雪が降らず(湿度がなく)冷たい風が吹きすさぶような地方では、冬場に風から守られる場所に移した方がよいでしょう。葉が痛むのを防げます。

新しい花芽は夏前までの管理次第と考えてよいでしょう。つまり春の肥料、新葉が展開しきるまでの十分な日光が大事です。あとはそれを痛めず、十分に成熟させるために日影に置くと言うことです。

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植替え

植替えの適期は春か秋、というより秋から春にかけての間で、具体的に言うと暑い夏が終わって冷房がいらなくなったかな、というころから、春に花が咲いている間までです。 花が終わるくらいまでは植替えOKですが、新しい葉が展開しきるころには、新しい根がかなり伸びているはずなので、そのころももうやめたほうが無難です。 秋に花が咲く前に植替えると若干株が弱ってよい花が咲かないという人もいます。確かに秋に株分けして小芽を分けたものなどは、本芸を発揮しないことがままありますので、立派にさかせたい場合には植え替えは春にすませて秋は肥培管理するほうがよいかもしれません。

植替え用土ですが、中粒を使ってください。経験的に、小粒では生長がよくなく、根詰まり、根腐れが起きやすいようです。鹿沼土など水はけのよい用土を中心にすれば配合は適当でもいいみたいです。赤玉は水持ちがよすぎるのであまりいれません。当園では鹿沼中心に軽石、ベラボン(ヤシガラのチップ)を若干混ぜた用土を使います。水はけ+適度な保水力で、根腐れもせず健全に根が生長します。

植替える際には根の先端、古くなって黒ずんでいる部分を切りさってください。さわるとぼろぼろとれる部分や、引っ張ると簡単にちぎれるような部分です。自生地にある場合や地植えにする場合は時間と共に自然にとれていくのかもしれませんが、鉢やポットで栽培する場合はスペースが限られているので古い根は処理し、新しい根が伸びる余地を作ります。大まかな目安としては、普通に育った株の場合根の3分の2程度を残せば問題なく生長します。 もちろん必要以上にちぎり取ってはよくありませんが、ポットの大きさにあわせて処理するくらいでもいいと思います。ちょうどポットの底に広がる程度でよいでしょう。ポットの底にぐるぐる巻きになるようでは根が長すぎるか、ポットが狭すぎます。

株分け

十分に成長して芽がいくつかに分かれているようであれば株分けができます。植替える際、それぞれの芽を動かして簡単に外せる場合があります。たくさんの芽であっても、それらが一箇所にまとまってできている場合は無理しない方がいいでしょう。 株分けがうまくできなくてもそれほど心配はいりません。分けた芽に長い根が数本ついていれば十分です。

4芽に生長した株 ダイオフララ

どんな花がよい花なの?

即売コーナーを見ると、一鉢数百円位のものから数千円、なかには数万円、十万円を超えるようなものまであります。一体どういう基準で値段がつけられているのでしょうか。 あくまでも私見ですが、よい花の要素と、どのように値段が決まるのかを簡単に説明したいと思います。

値段と花の美しさは単純に比例するものではありません。値段がつけられる際には花の美しさの他に、希少性が大きく関係してきます。つまり珍しいもの、数の少ないものが高価になります。これにより、咲き方である程度値段の上下がついてきます。 咲き方の違いですが、普通、雪割草の花は花弁(形態分類的にはガク片だそうですがここでは花弁とします)があって、オシベがあり、真ん中にメシベがあります。これが標準花です。標準花というくらいですからもっともノーマルな、いわばよくある花です。これに対し、オシベやメシベも花弁花しているような千重咲などの花は「変化咲き」と総称され、突然変異的に生まれたもので、発生率が少なく、珍しいものです。そのため単純に咲き方で比べた場合、値段は変化咲>標準花となります。

誕生してから一定の評価を得られた花は名前がつけられ、「銘品」と呼ばれるようになった花でも希少性により価格が大きく変わってきます。例えば「安寿」という美しい銘花がありますが、増殖がよいため普及し安価になりました。逆に新たに作り出されたものや、昔からあるのになかなか増えないものなどは比較的高価です。 希少性で値段が変わるのは当然として、つぎに咲き方とは関係なく花の評価の基準を説明します。

評価のポイントはいくつかありますが、重要な点を絞って説明します。他にもたくさんありますが、ポイントは以下の3点です。

  • 1.花型の良さ
  • 2.花の大きさ
  • 3.色、芸(特徴)がはっきりしていること

1.花型の良さ。個人的にはもっとも重要視されるべき点だと思います。雪割草は基本的に6枚の花弁からなります。多いものも少ないものもありますが、それぞれの花弁がたっぷりと丸く、厚みがあり、お互いに重なり合い、全体でまんまるとなるようなものを花型がいいと評します。逆に花弁の形が不揃いだったり、花弁が細く弱々しかったり、特に花弁が薄く縁がよれていたりするものは花型が悪いといいます。普通の花は星形になっています。円形をなす正形花というのはありそうで滅多にありません。

2.大輪であること。これは単純に花が大きいということです。小さいほうが可愛らしいという人もいるかもしれませんが、同じような色と形の花で花の大きいものと小さいものがあった場合、大きい方が素直に見応えがあります。

3.色ははっきりしたもの、芸もはっきりしたものが好ましいと思います。例えば単に赤花、紫花といっても、最後まで色の褪せないビロードのような濃色のほうがきれいでしょう。また赤や紫の花弁にはっきりした白色のおしべをもつ花などはくっきりした色対比の良さで評価できます。芸というのは様々な種類がありますが、例えば絞り、ぼかし、覆輪など花弁の模様も芸のうちです。そうした個性がより際立っているものが評価されることになります。

実際には全体の草姿など様々な要素がありもっと複雑になりますが、花の評価のポイントとしては主に上記の3点が見られます。こうした点と稀少性とで相場がきまってきます。この3点全てで合格となるような花はなかなかありません。個人的には花型のよい花にもっとも惹かれます。というより花型が悪いと、いかに立派な三段咲でも、いかに濃色でも、どうしても見劣りしてしまいます。逆に正形大輪花であれば多少ぼんやりした色の標準花でも上品な美しさを感じます。

以上ですが、上記のポイントを花選びの参考にしてよい花を探せばよいと思います。高価であることと花が美しいことはイコールではありません。F1などといってただの標準花に高い値段がついていることもありますが、これはその花を蒔くと優秀な花が生まれるためです。つまり花ではなく、その遺伝子に値段がついています。高い値段はそれなりの理由があってつけられているはずなので、どうしても理解できない値段がついている花は自分の好みに合わないと考えて無視するか、あるいは店員になぜたかいのか聞いてみてもよいかもしれません。単純にラベルのつけ間違いかもしれません。

買い方・選び方

葉っぱの色が濃く、中心の芽が丸くふくらんでいるものを選びましょう。葉が黄色くなっていると肥料不足か葉やけの可能性があり、花が本気をださない可能性があります。とんがった芽のばあい咲かないこともあります。 ときどき、葉っぱや芽が残ったまま根が腐っていることがありますので、心配ならお店の人に確認してもらいます。

これから飾ったり、花を楽しみたい場合は、咲いている時期に花/蕾がたくさんついていて、すっきりと上に伸びているものを買うとよいでしょう。地面近くで伸びずに咲いてしまっていたり、花茎があまりに横に倒れるように伸びているものは鑑賞するのには向かないでしょう。うまく育てられる人はどんな株を買っても問題ないでしょう。最低限の根っこがついてることを確認すれば花で選んで構いません。 実生初花、または2年目くらいの花は翌年以降力がつくとよりよい花になる(本芸をする)可能性がありますのでそれもお勧めできます。

交配実生苗やF1、F2などとかかれたものを買う場合はお店の人によく確認しましょう。意味が分からないまま買うとがっかりすることになりかねません。 例えば変化咲交配実生初花という場合、初花ですからどんな花が咲くのかまだ分かりません。変化咲が咲く可能性がある交配ということで、絶対咲く保証はありません。(普通は一般に25%位の確率で変化咲が咲きます)

F1は主に変化咲の交配親のことで、普通それを蒔けば変化咲が咲くものをいいますが、よく確認してからから買いましょう。F1のなかにもはずれ(いくら蒔いても標準花しかでない)がありますし、間違ってF2をF1として買った場合も、いくら蒔いても標準花しかでない可能性があります。

雪割草を枯らさずに育てる

基本的な育て方はすでに書いたとおりですが、話を聞いているとやはりうまく育てられないとか、毎年枯らしているという人がいるようです。雪割草は本来丈夫な植物です。葉っぱがなくても芽だけで生きていますし、高山植物のように環境を選ぶ訳でもありません。それでも枯れるというのは、栽培の上でなにかを根本的に間違っている可能性があります。そこで、どうしても枯れてしまう人のために、ポイントを絞って枯らさないための雪割草の育て方を解説します。

ポイント1遮光!

さんざん言われていることですが雪割草を栽培する上でのポイントは、夏場の遮光です。秋までに葉っぱがなくなるというひとは、遮光が甘い可能性を考えましょう。他の山野草と同程度の遮光でいいと考えている場合は、遮光率が足りません。半日陰におくとか、日中陽が当たらない場所におくとか、そんな程度ではまったく足りません。雪割草は90%の遮光が必要です。90%の日陰というと、目が慣れないと暗くて新聞が読めない程度の暗さです。薄く陽が差すとか鉢のラベルがはっきりよく読めるようでは雪割草が焦げてしまいます。葉がなくなる原因の半分は日当りが良すぎることです。 寒冷紗をすでに使っている場合は寒冷紗を二重にしてください。70~80%遮光のものを二重にかければほぼ日差しは防げます。また、西日にも注意してください。天上の日よけをしてあっても、棚の脇が無防備になっていることがあります。ダイオフララ(細切りにした寒冷紗のようなもの)やスダレなどを使い、脇から差す光も防ぐようにしてください。 このように陽を防ぐことで、直射日光による葉やけは防げるはずです。

ポイント2肥料!

夏を過ぎるころから葉先が黒く痛んできた、根っこがとけて芽が抜けた・・・。これも雪割草がだめになるよくあるパターンです。とくに、きちんと植替えたのにだめになってしまう場合。病気などを疑う前に、まず肥料をやりすぎていないか確認してください。植替えなくても数年耐えられるような丈夫な植物です。きちんと植替えて水やりも普通にやっているのに、夏すぎからだめになってしまうという場合、置き肥のほかに元肥を入れすぎていませんか?土に混ぜ込むタイプの元肥は、高温になる夏には成分流出量が増える可能性があります。そのためたくさん入れた場合、夏にそれが一気に溶け出して根を痛めることがあるのです。水のやり方にむらがある場合特にそうなりやすい。 肥料が隠れて見えないため、意外とこれに気がつかずに失敗を繰り返している可能性があります。他の常緑植物の話ですが、7月ごろから急に葉が痛んできて根も黒ずんで腐ってしまったものがあり、おかしいなと思って鉢を開けてみたら元肥がごってり入っていたことがありました。

肥料のやりすぎはやらないのと同じくらいよくありません。マグアンプKなどは非常に便利な肥料ですが、他の置き肥のサポートとして使い始めたほうが無難です。マグアンプKの大粒の場合、7.5cmポットで1粒、9cmポットで2粒くらいから初めて、様子を見て徐々に量を調整してください。

ポイント3物理的に腐らせない!

病気、ばい菌がつかないよう、基本的な管理を怠らないようにしましょう。まず、花が終わったら花茎を根本から取り去りましょう。咲ききらない蕾が芽もとに残っていた場合、これも取り除きます。散った花びらが株元に落ちていた場合、吹き飛ばしましょう。ハウス内や室内においた場合、このようにしないとカビが生えて腐ってしまうことがよくあります。逆に花柄除去をまじめにやれば殺菌剤など特にまかなくても腐る可能性はだいぶ減ります。

2011/03/25

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